ニュース&トピックス

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2019/07/23(火)
2019年7月9日第13回スポーツ戦略論Ⅰ ―増田明美さんをお迎えして―

・多方面での幅広い活動
 大阪芸術大学教授・スポーツジャーナリストとして、マラソン解説やNHKの朝ドラ、さらにはナレーションなど幅広い活躍でお馴染みの増田明美さんをゲストにお迎えした。
メディア関係の活動以外にも「いすみ健康マラソン」や「アクアラインマラソン」で大会の企画運営に関わりながら地域の活性化に尽力されている。


・取材、永 六輔さん「選手の前に人であれ」という言葉
 取材とは、「材を取る」と書く。「だから、その人のことを五感を感じて帰ってくることが大事である。」との教えを受けた。このことから、ノートにペンで直ぐにメモを取る習慣が身についてメモ魔となった。直ぐに情報発信できるようにメモしたノートを分類している。


・選手としての経験、成田高校からオリンピック初出場
 高校時代から、レースに出場する毎に日本記録を塗り替えていった。その当時は主に「精神論」「根性論」の指導であり、現在のような科学的手法があまり取り入れられていなかった。
 しかもオリンピックのマラソンは夏。だから、気温40度のニューカレドニアに行って一番暑い13時頃に長い距離を走るなどの暑さ対策を行っていた。当時は、何をするのでも試行錯誤で、我慢と忍耐で努力する事が求められていた。
 成田高校では、1.良い指導者に恵まれた。2.男女皆んなモチベーションが高く、良い仲間に恵まれた。3.一つでもいいから誰もやっていないことをやってやろう、と思っていた。監督には、「海外の選手と闘うために、前への推進力を得る必要があり、一歩のストライドを1cmでも大きくしろ。そのためには、腹筋を強化しなければならない。」との指摘を受けたので、どんなきつい練習の日でも、腹筋3000回を毎日続けた。腹筋3000回するのに、1時間半かかった。その成果が現れた当時の試合では、駆け引きが必要なく、天才少女と言われてきた。
 マラソンのスタートラインに立った時、自分よりはるかに背の高い選手、5000mの記録が自己より1分も速い選手と、同じ場所に立つと「ガチガチ」にあがってしまう。この選手達の中で、「腹筋3000回を毎日やってきたのは、私しかいない。私にしかできない」という確信を持っていたので、自信を持ってレースに臨めた。「皆さんも、私ならではの練習、自分がこれだけ取り組んだという練習があるとよいですね。」と発言された。


・オリンピックでの経験
 1984年のロサンゼルスでは、女子マラソン初のオリンピック選手として、最初から勢いよく飛び出していった。しかし、途中で何人もの選手に抜かれてしまった。これまでのレースでは、向かう所敵なしで、他者に抜かれたことはほとんどなく、抜かれたことに恥ずかしさを感じてしまった。恥ずかしさに負けて、「逃げたい」と思い、途中棄権をしてしまった。
 帰国した成田空港では、ある人から「おい、非国民」と言われるなどして、その後3ヶ月間、部屋から出られなくなり、引きこもり、死んでしまいたい、と思ったこともあった。そのような時にある人から励ましの手紙をもらった。その手紙に書かれていた「明るさ求めて、暗さ見ず」という言葉を胸に、もう一度頑張ろうと思った。
 4年後の大阪国際女子マラソンでも、また試練があった。沿道から「増田、お前の時代は終わったんや」と言われ、止まってしまった。「逃げたい」と思い、地下鉄を探していた。
 しかし、助けてくれたのは、またしても人であった。私を追い越していった市民ランナー6人は、誰一人として、素通りする人はいなかった。ある人は「ハイ、ハイ」とステップの合図をしてくれたり、またある人は「増田さん、一緒に走ろう。」と言葉をかけてくれた。とても勇気付けられ、もう一度走り出して完走することが出来た。



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・現在の解説
 一番苦しかった時に、人に支えられた。苦しかった経験があるからこそ、今の選手に寄り添った解説につながっている。人間誰もが人生の長距離ランナーだから、自分を励ましてくれた6人の市民ランナーのように、隣りに苦しんでいる人、つらい時を過ごしている人がいたら、「一緒に走ろう!ちょっと給水しよう!」と手を差しのべてあげたい。この経験が現在の選手のことを思いやる解説、選手の励みになる解説に繋がっているのかもしれない。


・「置かれた場所で咲きなさい」
 増田さんは、自分が必要とされている場所で輝こうと思った。渡辺和子さんの著書「置かれた場所で咲きなさい」はとても勇気をもらえる書籍である。パラリンピックの標語である「失った機能を数えるな、残った機能を最大限に生かせ!」にも通じるものがある、と紹介された。


・2020東京オリンピック・パラリンピック
「オリンピックは熱気に包まれて盛り上がるから、私はパラリンピックを応援します。」
一般社団法人日本パラリンピック陸上競技連盟会長を引き受けて、パラリンピックが観客でいっぱいになるように、スタジアム、競技場、沿道から頑張っている選手に声援を送って欲しいと、働きかけて、パラリンピックを盛り上げていく力になりたい。
 ロンドン・オリンピックパラリンピックでの、イギリス・チャンネル4の告知CMを紹介された。イギリスでも、この告知が出される前までは盛り上がっていなかった。「日本では、未だパラリンピックの認知が低いので、これからもっともっと紹介していき、盛り上げ、応援して行きたい。」とのことであった。


 

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